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シナノユキマス

シリーズ、「知られざるチェコ人」。2度目の今回は人ではなく、魚です。


シナノユキマスはポーランド原産のサケ科シロマス属に分類される魚です。ロシア語及びチェコ語ではマレーナ、英語名だとmaraeneやmaraene whitefish、又は単にwhitefishです。ポーランド原産ですが、日本に入ってきたのはポーランドからではなく、当時のチェコスロバキアでした。


長野県佐久地方は長い間名産の佐久鯉を養殖していましたが、1970年代に入り、翳りが見えだし佐久で鯉1キロにするのに3年掛かるところが他の地区で2年で済み、味は別にして値段で太刀打ちできなくなってきました。そこで佐久鯉に代わる新たな魚の養殖へ進みだします。


長野県はご存知のように海に面しない内陸の県。交通網の発達で新鮮な海水魚が運ばれるようになったとはいえ、歴史的にも伝統的にも淡水魚である鯉を食べてきた地方だけに安価に手に入る淡水魚が好まれていたのでしょう。


1930年には当時のソ連からシロマス属の卵を導入し、琵琶湖に放流されましたが増殖に失敗。その後青森県がまたまたソ連からバイカル湖に生息する近縁種のオームリの卵20万粒を導入するが失敗。因みに何故にオームリを選んだかというと当時の青森県知事が親善訪問した際に食べたオームリ料理が大変美味しく、且つオームリが青森と発音が似ていたからという話です。


1930年の琵琶湖、1970年は青森と二度続けてソ連の卵で失敗。何故にこれらの卵は日本でダメだったのか。

①ソ連は琵琶湖と青森よりも低い緯度の土地であり、気候が琵琶湖と青森とは違った。琵琶湖や青森の湖沼はソ連産の魚には温かったのかもしれません。

②脆弱な輸送手段及び輸送方法。1930年なので空輸ではないでしょうし、冷蔵技術も悪かったでしょう。1970年の時も青森なので近いと判断し、船で運んだのかもしれません。


その経験を踏まえ、長野県水産試験場は野生より当時からソ連では飼育されていたシロマス属のマレーナ及びぺレッドに注目し、選択します。しかし、問題が発生しました。1930年はまだしも、1970年の時よりも対ソ連外交は緊迫しており、単発的な交渉でマレーナかぺレッドの卵をソ連から譲りうける交渉は不可能と水産庁から言われました。


マレーナ又はぺレッドの導入は万事休すか。


つづく


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